「自然選択」で残り続けた精神病の遺伝子
一方で「不安症」や「うつ病」とは異なり、人間の心理とは関係なく残存している精神病があります。「統合失調症」や「自閉症」「双極性障害」などがそれに当たり、これらは主に親からの遺伝によって発症するものです。
ネッセ氏は「精神疾患に関する遺伝子が、自然選択によって消滅しなかったということは、人類にとって何らかの利益があったからだ」と指摘します。
生物にとって一番の関心は、子孫を繁栄させ、後世にバトンを繋いでいくことでしょう。その中で、遺伝子由来の精神病が子孫の数に悪い影響を与えた例はほとんど確認されていません。むしろ、遺伝子的な疾患が子孫の繁栄を促すことも考えられるのです。
例えば「双極性障害」は、うつ病のように気が沈む状態から、躁状態へと一挙に気分が上がる状態を繰り返すものです。これを受けて、ネッセ氏は「気分の低下から上昇の間に、子孫繁栄に繋がるチャンスを得た事例もあるのでは」と推測しています。