成長後の動物の遺伝子をウイルスで変異させる
受精卵の遺伝子を書き換えるのとは異なり、既に大人になったマウスの肝臓の遺伝子を書き換えるには、数億個もの細胞の遺伝子を変化させなければなりません。
そこで軍の研究者たちは、無害なDNAウイルスを使うことにしました。
ウイルスは細胞と接すると、自分の遺伝子を細胞に注入して変質させようとする性質があります。
研究者はこうしたウイルスの特性を利用して、解毒タンパク質の設計図(DNA)を肝臓の細胞に注入させ、肝臓に解毒物質の分泌を行わせようとしました。
実験は研究者の目論見通り進行し、ウイルスに感染したマウスの肝臓は、毒ガスに対抗する強力な解毒物質を分泌しはじめました。
軍の研究者は、この耐性マウスに対して、6週間にわたって9回の致命的なレベルの神経ガスを投与しましたが、マウスは生き延びることができました。
また変異の効果は5ヶ月間安定しており、その間、変異はマウスに特に害を及ぼしているようにはみえませんでした。
軍の研究チームは、この技術が兵士だけでなく、有機リン酸塩系の農薬を扱う農業従事者の健康を守るためにも利用可能だと考えています。