- 大人になった動物の遺伝子を書き換えて、毒ガスに耐性をもたせた
- この技術を応用することで様々な体の部位を変化させられる
戦争などで使われる化学兵器から身を守るには、防毒マスクを装着することが一般的ですが、化学兵器のなかには皮膚から浸透して致命的な効果をあたえるものが多くあり、防ぎきれないのが実情です。
そこで米陸軍の研究者たちは兵士の遺伝子を書き換えて、毒ガスに対する耐性を持たせる計画を立案。
「遺伝子は生まれる前の受精卵でなければ変化させられない」という常識が変わろうとしています。
研究内容は1月22日に、Venkaiah Betapudi氏ら米国陸軍化学防衛研究所の科学者たちによって学術雑誌「Science Translational Medicine 」に掲載されました。
https://stm.sciencemag.org/content/12/527/eaay0356
マスクでは防げない毒ガス
今回の実験で用いた毒ガスは、サリンなどに代表される神経ガスです。
このタイプの神経ガスは、人間のあらゆる筋肉の動きを阻害することで、けいれん、呼吸困難を引き起こし、死に至らしめます。
また神経ガスの成分は皮膚からも浸透するために、防毒マスクだけでは防げません。
毒の効果を中和する治療薬も存在しますが、効果を発揮するには毒ガスに接触した直後に投与する必要があり、戦場にいる兵士にとっては必ずしも実用的ではありません。
そこで軍の研究者たちは、兵士の肝臓の遺伝子を書き換えることで機能を強化し、神経ガスの解毒薬を分泌させる計画を打ち立てました。
計画の第一段階では、人間の肝臓の代わりに、マウスの肝臓が遺伝強化されました。