気になる焼き上がりは?
地球でクッキーを焼いた場合、必要な焼き時間は20分程度でした。そこで、実験でも最初は149℃の設定で25分間焼いてみましたが、結果は完全な生焼けでした。
続く2回の実験では、焼き時間を倍の50分に延長してみましたが、こちらも完全に火の通った焼き上がりとはなりませんでした。
最後に宇宙飛行士は、クッキーを2時間かけてオーブン内で焼き続けました。ここでやっと表面が綺麗に焼き上げることができたのです。
「見たところ完全に茶色く変色しています」宇宙飛行士のParmitano氏は無線でそのように報告しました。
また最初の生焼けのクッキーを除けば、オーブンからはきちんとクッキーの焼けた匂いがしたといいます。しかし、最後に焼いたクッキーにしても、中まで完全に調理されているかはわかりません。
なぜ地上と宇宙で、これほどまでに焼き時間に差が出てしまったのかは、現在不明です。それはこれからの調査で明らかにしていくとしています。
さて、気になるお味の方は? と聞きたくなりますが、こちらも残念ながら現在のところ不明です。きちんと焼けたかどうかわからないクッキーを宇宙で宇宙飛行士に食べさせるわけにはいきません。
こちらも焼いたクッキーを地球へ運び後から調査を行うことになるそうです。チョコチップクッキーがもはや完全な危険物扱いですね。
これらのクッキーたちは、スペースX社の輸送宇宙船ドラゴンで、1月7日に地球へ持ち帰られ、現在専門家によるテストが行われているとのことです。
クッキー1枚を完全に焼くだけでも、大変な苦労ですが、人類が宇宙で調理を試したのはこれが初めのことです。慎重になるのも無理のないことです。
この実験の結果を踏まえて、今後の宇宙での調理についての研究が進められていくことになるのです。
実際、地球で20分で焼けるクッキーは2時間もかけないと表面が綺麗に焼き上がらないという状況が生まれていました。宇宙にはこんなところにも未知の問題が潜んでいるようです。
しかし、地上でも料理が生焼けになることは珍しい話ではありません。もしかしたらNASAの宇宙飛行士は、科学においてはプロフェッショナルでも、料理に関しては苦手だっただけなのかもしれません。
真相はいずれ明らかになるでしょう。
色々と改善が進んでいるとはいえ、まだまだ宇宙食は味気ないものです。
NASAの元宇宙飛行士Massimino氏は「料理は家庭の温かい記憶と結びつく重要なものだ」と語ります。食品は単に栄養を得るためだけでなく、宇宙飛行士を彼らの家庭の思い出とつなげ精神を維持するために重要なものなのです。
月や火星への探査などが可能になれば、宇宙飛行士のミッション期間は非常に長期化していくことが予想されます。
そんなときのパッケージされた乾燥食品だけでなく、焼きたてのクッキーがあることはとても重要になるかもしれません。