原因は「女王が連立する社会システム」にあり
P.フスカトゥスの社会(コロニー)は、女王バチが同じ巣内に複数存在することがあります。
ミツバチのように単一の女王を頂点とするコロニーでは、成員の役割が明確に決まっているため、階級間の争いも起こることがありません。ですから、わざわざお互いの顔を認識する必要もないのです。
しかし、P.フスカトゥスの社会では、1つの巣に5匹以上の女王が連立することもあります。すると、階級間の衝突も起きやすいため、巣内のヒエラルキーを守ることが欠かせません。
つまり、無益な争いを避け、社会を平和に保つには、メンバー間で顔を認識し、階級を確認する必要があるのです。どこの組のモノか睨み合うといった感じでしょうか。
それから、女王の中にもヒエラルキーが存在します。
一番権力が強いのは、最も子孫を残すことのできる女王バチで、それより下位の女王たちは、残って卵を産むか、あるいは巣を離れて新たに自分だけのコロニーを作ることができます。しかし、出来立ての小さな巣は、攻撃されやすく、卵を盗まれたり、破壊される可能性も高いので、そのまま残り続ける女王の方が多いのです。
この際、女王の間に、支配権をめぐって争いが勃発します。そこで女王たちは、顔を見分けることで、勝った相手、負けた相手を把握することができ、巣の中での無益な争いを減らすというわけです。
そして、互いの顔を覚えておく必要があるため、記憶力も向上します。
視覚識別能力に長期的記憶力…彼らは、昆虫界で最もインテリジェントな種族なのかもしれません。