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観測可能な宇宙に地球外生命は存在しない? 新しい現実的な生命誕生シナリオが発表される

2020.02.04 Tuesday

RNAとDNAの3Dモデル図。/Credit:depositphotos
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  • 宇宙は指数関数的に膨張しており、地球から観測可能な範囲を超えて広がっている
  • これを考慮して確率計算すると、生命は特別なプロセスを必要とせずとも、宇宙のどこかに偶然発生できる
  • このシナリオが正しければ、観測可能な範囲で地球外生命を発見する可能性はほぼ無いことになる

宇宙に生命は地球だけなのでしょうか? それとも、なにか特別な条件を揃えれば、宇宙のどこにでも生命は誕生する可能性があるのでしょうか?

生命誕生の決め手となる、DNAやRNAはヌクレオチドと呼ばれる分子のつながりでできています。4種のヌクレオチドの繋がり方のパターンによって、複雑な生命の情報が作られています。

もちろん、これはデタラメに組み合わせたとしても意味のある情報にはなりません。そのため、たまたま高度な生命活動を可能にするRNAが生まれる確率は、恐ろしく低いものになります。

これは例えるなら、猿がでたらめにタイプライターを打ったら、偶然シェイクスピアの小説が完成した、と言われるくらいの確率です。

どうすればそんな低確率から、生命を生み出すような意味あるRNAができるのでしょうか? これまで、様々な議論が繰り返されてきましたが、その理由を説明できる理論は見つかっていません。

しかし、新たな研究では、単純に宇宙の広さとRNAの複雑さを元にした確率計算によって、本当にたまたま偶然宇宙に生命が誕生したと説明しています。

果たして、生命は本当にただの偶然の産物なのでしょうか? それとも特別なプロセスを経て、割と簡単に誕生するものなのでしょうか?

この研究は、東京大学で天文学を専攻する戸谷友則教授により発表され、オープンアクセスの学術雑誌『Scientific Reports』に2月3日付けで掲載されています。

Emergence of life in an inflationary universe
https://www.nature.com/articles/s41598-020-58060-0

思っていたより、ずっと広い宇宙

NASAの観測データに基づいた観測可能な宇宙の対数スケール概念図。/Credit:Pablo Carlos Budassi,Wikipedia Commons

今回の研究が注目したのは、最新のインフレーション理論が示す宇宙の広さです。

現在人類に観測可能な宇宙の距離は138億光年と言われています。それは宇宙が誕生してから138億年経っており、光より早く移動するものは宇宙に存在しないことが根拠です。

しかし、実際宇宙は加速膨張を続けています。私達の使う138億光年は、138億年前の光を見ているという意味に過ぎず、実際光の通ってきた空間は、この膨大な時間が経過する間に大きく引き伸ばされています。

インフレーション宇宙論によれば、宇宙は指数関数的に膨張していて、空間の体積はねずみ算式に増えています。

それを考慮した場合、現在の観測可能な宇宙の空間的な大きさは、半径が約464億光年になると考えられ、空間の持つ体積はは、見かけよりも1078倍以上に広がっています。

138億年前のインフレーションから現在までの宇宙の膨張。/© 2015 東京大学

さらに私達に観測できる宇宙とは、ビッグバンの熱が冷めて光がまっすぐ飛べるようになった「宇宙の晴れ上がり」以降の光です。

「宇宙の晴れ上がり」は宇宙誕生から38万年後だったと言われています。それ以前に広がった空間も、指数関数的に膨張を続けていることを考えると、地球の観測限界と宇宙の空間的な果てが、一致しているとは考えにくい話になります。

そうなると空間的な宇宙の果ては、地球から観測される範囲よりもっとずっと遠い場所だと予想されるのです。

こうしたインフレーションで広がる全宇宙の星の数は、10100個〜10178個はあるだろうと考えられます。

次ページ極端な低確率の出来事もカバーできる宇宙

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