- イラクのシャニダール洞窟で、ネアンデルタール人の上半身の遺骨が発見される
- 第三者により埋葬されたあとが確認できる
ネアンデルタール人(約40万年〜2万年前)を知る上で最も重要な遺跡の一つが、イラク北部クルディスタン地域にある「シャニダール洞窟」です。
1950〜60年代には、10体の断片的な人骨が発見されており、その内の一つに、多くの花粉が付着していました。このことからネアンデルタール人は、従来の予想に反して「献花葬」をしていた可能性が示唆されています。
しかしそれ以降、ネアンデルタール人の遺骨の出土が極めて稀であることも重なって、彼らの埋葬の秘密は謎のままでした。
ところが今回、イギリス・ケンブリッジ大学の考古学研究チームにより、同地で新たなネアンデルタール人の遺骨が発見されました。
しかも、遺骨の様子から、明らかに第三者によって埋葬されたことが伺えます。
研究の詳細は、2月18日付けで「Antiquity」に掲載されました。
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/new-neanderthal-remains-associated-with-the-flower-burial-at-shanidar-cave/E7E94F650FF5488680829048FA72E32A
上半身の大部分が発見される
遺骨の発掘には、まさに骨の折れる作業でした。
2014年に始まった再調査は、ISISの影響により一時中断。その後、2016年に肋骨が、さらに2年後の2018年に平らに砕けた頭蓋骨が発見されました。結局、骨格の全貌が明らかにされたのは2019年のことです。
頭蓋骨、上半身、腰部の大部分が残っている大変貴重なもので、さらに関節を含む腕骨が発見されたのは、シャニダール洞窟では50年以上ぶりだとか。
遺骨はすべて一人のネアンデルタールのもので、「シャニダールZ」と命名されています。
さらに、年代測定によると、骨は約7万年前のものであることが判明し、発見された歯の分析から、シャニダールZは中年の男性であったことが分かっています。
上半身が仰向けになっており、左腕は丸められて頭の下に置かれ、まるで眠っているように安置されていました。また、頭の近くに見つかった石は、おそらく「ここに遺体が眠っている」ことを示すマーカーと思われます。
遺骨に花粉の付着は確認されていませんが、明らかに意図を持って埋葬されたことが分かります。
現在、シャニダールZは、ケンブリッジ大学にて調査中とのことです。
これまでネアンデルタール人は、非文化的で野蛮、動物的で知恵に乏しいと考えられていましたが、これは大きな間違いかもしれません。