エネルギーの代謝も遺伝子の複製もできない生物
今回の研究によって、生物を上回る遺伝子量を持つウイルスの存在が明らかになりましたが、近年行われた他の研究では多くの微生物が、独立して生きていくための代謝や自己複製に必要な遺伝子を欠いていることもわかってきました。
例えばキジラミに寄生するカルソネラと呼ばれる細菌は遺伝子を182個しかもっておらず、エネルギー代謝や遺伝子複製に必要な遺伝子のほとんどを失っています。
カルソネラが代謝や自己複製を行うときは、宿主から必要なタンパク質や遺伝子を拝借するしかありません。
カルソネラが世代を超えて生き残るときには、キジラミの生殖細胞に紛れ込み、生殖細胞が受精卵となった後は、キジラミの細胞と共に分裂しながら増えていきます。
単独では生存できず、他種族の細胞に依存しているのはウイルスと同じであり、カルソネラは細菌に分類されていても生物の定義から外れているのです。
研究者の中には、カルソネラはミトコンドリアや葉緑体のように、細胞内器官に進化している最中だと考えている人もいます。
しかし生物をやめてしまうことを進化と呼ぶのかは、まだ議論の余地がありそうです。