- 南極大陸の雪原が、真っ赤に染まる現象が確認される
- 原因は、雪の中に住む「氷雪藻」が繁殖したことによる
- 氷雪藻の繁殖は、地球の温暖化が深刻化していることと関係している
ウクライナの南極観測チームの報告によると、いま南極大陸のあちこちで異変がおきています。
チームが所有する観測施設「ベルナツキー基地」周辺の雪原が、ここ数週間にわたり、血のバケツを振りまいたかのように赤く染まっているというのです。
WMO(世界気象機関)によれば、南極の気温は過去50年で3度も上昇しており、今年には過去最高となる「18.3度」が記録されています。
現在、南極大陸は、地球上で最も温暖化の激しい場所のひとつですが、調査の結果、今回の「血の雪」現象も温暖化が原因だったようです。
犯人は雪の中の「藻」
「血の雪」の正体は、Chlamydomonas nivalisという学名の氷雪藻(ひょうせつそう)です。
氷雪藻は、世界中の雪原や氷河、山の中に存在し、凍った水の中で繁殖します。冬の期間は、雪や氷に隠れて冬眠し、雪解けの夏時期になると、目を覚まし、繁殖を開始します。
その際、赤い色素を持つ胞子を咲かせるのですが、これが雪を赤く染める彩雪現象の正体です。
赤雪に関する最古の記録は、「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスが、紀元前3世紀にものした『動物誌』の中に確認できます。
しかし、アリストテレスは、赤雪の原因について、「雪の腐敗からウジのような下等生物が自然発生し、そのせいで赤くなる」と述べているようです。
これまでの研究により、氷雪藻の赤い色素は、カボチャやニンジンと同じ「カロテノイド」であることが分かっています。カテロイドは、雪を赤く染めるだけでなく、太陽熱を吸収して、藻を紫外線から保護する役割も果たします。
そのおかげで、氷雪藻は、遺伝子を傷つけるリスクなく、夏の日差しを存分に浴びることができるのです。