- 昨年9月から続いていたベテルギウスの減光が、今月前半に止まり、一転して増光に変わる
- 今回観察された減光現象は、観測上の誤差内にあり、実際の光度自体は変わっていない可能性も
地球から約642光年の場所にある「ベテルギウス」は、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに、冬の大三角を成す有名な恒星です。
ところが、昨年の9月頃から急速に光度が落ち始め、その年の12月には観測史上最低の光度を記録。ベテルギウスは寿命が近づいており、いつ超新星爆発を起こしてもおかしくないと言われていました。
ベテルギウスが爆発した場合、その光度は、満月と同じ明るさにまで達すると推測され、大きく話題となりました。
しかし、アメリカ・ビラノバ大学の最新研究によると、ベテルギウスの減光が止まり、一転して増光しつつあることが判明したのです。
ベテルギウスの光度変化
研究チームによると、ベテルギウスの実視等級は、昨年9月時点で0.6等級でしたが、今月7日〜13日にかけて約1.6等級と最低ラインに達しました。
およそ半年余りで、1等級ほど減光したことになります。
AAVSO(アメリカ変光星観測者協会)が集めた観測データをグラフ化してみると、以下のようになりました。
昨年9月から下がり始めたベテルギウスの光度は、今年の2月前半で最低を記録し、その後、18〜22日の観測で1.5等級まで増光しています。
研究主任のEdward Guinan氏によると、「ベテルギウスは脈動変光星に属し、光度が変化する周期を持っている」とのことです。これまでの研究の結果、変光の周期は、424(±4)日と予測されています。
それをもとに、前回の変光から計算してみると、今年の2月14〜28日の間に減光から増光に変わることが割り出されました。今回の観測結果は、まさにその周期の存在を裏付けるものとなっています。
その一方で、増光が見られた時点におけるベテルギウスの赤外線波長を、50年前のものと比べたところ、その違いは、観測上の誤差内にあり、ベテルギウスの光度そのものは変わっていない可能性も浮上しています。
もしかしたら、昨年から続いていた減光現象は、ベテルギウス自体が放出したチリやガスで光が部分的に見えなくなったことが原因かもしれません。
実際、ベテルギウスの表面は、活動エネルギーが強いことが分かっています。
今後の観測で、ベテルギウスに光度の変化がないとすれば、昨年から見られた減光も超新星爆発には繋がらない可能性が高くなります。
突然暗くなったり明るくなったりで、地球人を振り回しているベテルギウスですが、私たちが生きているうちにイベント(誤差は約10万年)を観測するのは難しそうですね。