- 「ランゲオモルフ」というエディアカラ紀の原始生物が、互いをつなぐ糸を持っていたことが判明
- 糸の詳細な機能は不明だが、栄養摂取や繁殖のために使われていた可能性が高い
「ランゲオモルフ(Rangeomorph)」という古代の原始生物がいます。
約6億2000万年〜5億4200万年前のエディアカラ紀に存在した生物で、2000年代の初めに、カナダ東岸のニューファンドランド島でその化石層が発見されました。
シダにそっくりですが植物ではなく、かと言って動物にも分類できません。食事や繁殖の方法も分からない未知の生物なのです。
そんなランゲオモルフですが、今回イギリスのケンブリッジ大学、ブリストル大学の研究により、化石中のランゲオモルフ同士をつなぐフィラメントのような細糸が初めて発見されたのです。
この糸が、栄養摂取や繁殖形態の秘密を解明する鍵となるかもしれません。
研究の詳細は、3月5日付けで「Current Biology」に掲載されています。
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(20)30096-8#%20
「糸」は何のためにあった?
ランゲオモルフは、海辺の浅瀬地帯に生息し、植物のように固着的な生活を送っていました。口や生殖器官が見つかっておらず、どのように栄養摂取や繁殖をしていたのかはわかっていません。
現代のサンゴやフジツボがするように、海水から栄養素を濾(こ)し取っていたのかもしれません。こうした特徴から、これまでランゲオモルフは無性生殖で、仲間との交流は一切なかったと推測されていたのです。
しかし今回、新たに発見された糸状物質により、定説が覆るかもしれません。
調査の結果、ランゲオモルフに発見された「糸」の多くは、幅1ミリメートル、長さは数センチ〜40センチほど、中には4メートルを超えるものもあることが分かりました。
ランゲオモルフは、この糸を共有することで仲間と繋がっていたのです。
一方で、糸状物質が正確にどのような役割を持っていたのかはまだ分かっていません。
現時点でいくつかの仮説が挙げられており、波に呑まれないためのアンカー説、栄養分を共有するためのパイプライン説、子孫繁栄のための生殖器官説などがあります。
ただハッキリしているのは、エディアカラ紀の原始生物が世界の覇権争いをしていた時代に、ランゲオモルフはその繁殖競争の中で頭一つ抜けていたということです。
それは、彼らの化石が広範囲にわたって見つかっていること、またサイズも数センチ〜数メートルと非常に多様であることからも伺えます。
そうした繁殖の強さに、糸状物質が一役買っていた可能性は十分にあるでしょう。