- ロシア平原にて、マンモスの骨を組んでつくられた「ボーン・サークル」が発見される
- 建造年代は、2万年以上前の最終氷期全盛の時代と判明
- 人の滞在した跡が発見されたが、長期滞在の痕跡はなく、建造目的は不明
マンモスの骨を組んでつくられた謎の「ボーン・サークル」が、ロシアにて発掘されました。
場所はモスクワから南に500キロほど離れたドン川西岸で、建造年代は今から2万年以上前の最終氷期全盛の時代と判明しています。
同じようなボーン・サークルは以前にも発見されていますが、今回はそれより5000年以上も古く、同タイプのものとしては最古の建造物でしょう。
しかし、ボーン・サークルを建てた目的はかなり謎めいているようです。
研究の詳細は、3月17日付けで「Antiquity」に掲載されました。
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/chronology-and-function-of-a-new-circular-mammothbone-structure-at-kostenki-11
人が滞在した痕跡を発見
調査の結果、ボーン・サークルの直径は12.5メートルにおよび、ほとんどがマンモスの骨です。
中には、トナカイやウマ、オオカミ、クマ、キツネなどの骨も混ざっていましたが、マンモスの骨が圧倒的に多く、下顎が51個、頭蓋骨が64個見つかっています。
サークルの隅には、3つのくぼみ(Pit)があり、使われなかったマンモスの骨が埋められていました。
サークルの中には、木炭や骨の燃えかすが出土しており、他にも、火打ち石の薄片や石の断片も300以上見つかりました。
このことから、当時の人々がサークルの中で暖を取り、石器を使って狩りをした可能性が浮上しています。
およそ7万〜1万年前まで続いた最終氷期は、ロシアが位置する高緯度地帯を極寒の地に変えました。当時の気温は、平均して氷点下20度に達していたといいます。
同じ高緯度地帯のヨーロッパ北部に住んでいた人類は、多くが寒冷化した土地を去り、南下して行きました。しかし、ロシア平原の人々は、木炭や石器が見つかっていることから、同地にとどまったのかもしれません。
であれば、ボーン・サークルは、寒さをしのぐためのシェルターとして建てられた可能性も考えられます。
しかし、研究主任のアクレサンダー・プライアー氏(エクセター大学、英)は「木炭は見つかったものの、長期滞在の痕跡はなく、ボーン・サークルに定住した可能性は低い」と話します。
ボーン・サークルが何の目的がつくられたのかは不明ですが、同氏は「儀式的な用途に使ったのかもしれない」とも指摘します。マンモスを祀るための社やモニュメントとして使われたとも推測できるでしょう。
また、人々が一時的にも同地に滞在した理由として、氷期の間も完全に凍結しなかった水源が存在した可能性も挙げられます。水があれば、マンモスや他の動物たちも生存できますし、木炭の原材料である針葉樹を繁殖させることも可能です。
もしかしたら、最終氷期中のロシアは居住不可能な土地ではなく、マンモスはその極寒の地で神格化された生き物だったのかもしれませんね。