- 天王星は磁気軸と自転軸が一致しておらず、自転によって大きくぐらつく特殊な磁気圏を持っている
- 34年前のボイジャー2号による磁気圏の観測データを再調査したところ、プラズモイドを発見した
- プラズモイドは磁気による泡で、天王星大気の50%近くがこの泡によって宇宙に失われた可能性がある
天王星は地球から遠く離れた太陽系の惑星で、未だにわからないことが数多く存在します。
天王星に対する人類唯一の接近観測は、34年前に行われたボイジャー2号の観測だけです。
このときボイジャー2号は、天王星の雲頂から81,433キロメートル以内の距離を飛行し、2つの新しいリングの存在と、11の新しい衛星、そして気温がマイナス214℃未満であるというデータを収集しました。
そのため、これらのデータは、現在も貴重な天王星の情報源になっています。
今回の研究者は、34年前にボイジャー2号が天王星のそばをフライバイ観測した際の磁気データを見直しました。
そして、そこから天王星の大気が失われた原因と考えられる新事実を発見したのです。それは複雑な天王星磁気圏の中で生まれた磁場の泡でした。
この研究は、米国ゴダード宇宙飛行センターの研究者2名により発表されており、論文は惑星科学の学術雑誌『Geophysical Research Letters』に掲載されています。
ぐらつく天王星の磁気圏
なんじゃこりゃと思うかもしれませんが、天王星は磁気軸と自転軸が一致しておらず、およそ60度の角度でズレています。
地球は自転軸と磁気軸はほぼ一致しているので、磁気圏はきれいな回転をしていますが、天王星はこの軸のズレのために、磁気圏が非常に複雑な動きをしているのです。
このため、天文学者たちは未だに天王星の磁場の状況を正確にはモデル化できていません。
今回の研究者たちは、天王星と海王星という巨大氷惑星の研究プロジェクトメンバーですが、この磁気について解決すべき問題を探していました。
天王星の奇妙な磁気が直接測定されたのは、30年前が最後です。
そこで彼らは、その測定値をダウンロードして何か新しいことが見つからないか再調査を行ったのです。
過去の磁気測定では、8分間の測定データの平均値をプロットするという形で測定値が出力されていました。しかしデータはもっと細かく取られているため、彼らは1.92秒というこれまで確認されていなかった、非常に細かい時間分解能でデータを見直したのです。
赤い線が過去の8分間ごとに平均した値を並べていったグラフ、黒い線は今回行った1.92秒毎の細かな時間分解能のプロットを示します。
こうしてみると、今回のプロットでは、中心辺りに短時間に素早く上下に跳ねるような磁場の変化が見られます。
これは一体何を表しているのでしょうか?
研究者はこれがプラズモイドだと考えました。