- カエルは脊椎動物の中で最も種類が多い生物のひとつであるが、頭蓋骨の研究はあまり進んでいない
- 今回、158種の主なカエルの頭蓋骨を調べたところ、多種多様な形状パターンの存在が判明
脊椎動物の頭蓋骨は、脳の保護や敵への攻撃、捕食者からの防御など、さまざまな役割を担います。
中でも特に興味深い頭蓋骨を持つのがカエルです。
カエルは脊椎動物において最も種類に富んだ生物のひとつですが、色やサイズ以外の見た目にそこまで差がないせいか、頭部内の解剖学的な研究はあまり進んでいませんでした。
しかし今回、アメリカ・フロリダ大学の研究により、カエルの頭蓋骨の驚くべき多様性が明らかになっています。
同種内でここまで違いが見られる種は非常に珍しいとのこと。
研究の詳細は、3月27日付けで「PNAS」に掲載されました。
https://www.pnas.org/content/early/2020/03/26/2000872117
かくも美しきカエルの頭蓋骨
現在、世界には7000種を超えるカエルが存在します。今回はその中から主要な系統を代表する158種のカエルから、頭蓋骨データを集めて調査しました。
その結果、多様な頭蓋骨のパターンが明らかにされています。
例えば、溝やトゲのような突起が複雑に入り組んだ、まるで要塞のような頭蓋骨が発見されました。
研究主任のダニエル・パル氏は「天敵から食べられないための保護の役割を持っているのではないか」と指摘します。
この要塞タイプは、アフリカ・ウシガエル、南アメリカ・ツノガエル、ソロモン諸島のリーフ・フロッグなどによく見られました。
また、スコップ型に先細りしている頭蓋骨も多く見つかっています。
このタイプの頭蓋骨を持つカエルは、頭部をヘルメットのようにして巣穴に蓋をして、外敵の侵入を防ぐそうです。
他にも、騎士の盾のような頭蓋骨や周囲がトゲに覆われた頭蓋骨など、ユニークなものが多数見つかっています。
しかし一方、それぞれの頭蓋骨がどのような機能を持ち、どのように発達してきたのかは今後の課題となります。
カエルは数百万年におよぶ長い進化の歴史を持ち、食生活やサイズ、生息環境、毒の有る無しなど多様に枝分かれしてきました。
そのため、頭蓋骨の変化もそれぞれ別の経緯があると考えられます。
例えば、冒頭に挙げた画像では、脳を収容する青い部分が、顎を含む緑の部分より骨密度が低いことが分かっています。こうした場所によって骨密度が違うことにも進化上の理由があるはずです。
パル氏は「同じひとつの種の中でこれほど多様な分岐を見せる生物は大変めずらしいこと。今回の研究で、これから解明すべき課題もより幅広くなったでしょう」と話しています。