
- コロナ感染者の急増に伴い、医療機関では人工呼吸器の不足が増え始めている
- イタリアのエンジニア企業が、シュノーケリングマスクを代替人工呼吸器として応用することに成功
新型コロナウイルスの爆発的な急増に伴い、医療従事者および人工呼吸器などの医療器具不足が各国で広がりつつあります。
この問題に対処するため、イタリアのエンジニア企業・ISINNOVA(イシンノヴァ)は、フルフェイス型のシュノーケリングマスクを3Dプリンタ製バルブで人工呼吸器に接続し、C-PAP(持続陽圧呼吸療法)マスクにする技術を開発しました。
同社サイトにて、マスクの複製方法を紹介した動画を公開しています。
シュノーケリングマスクを呼吸器に

ISINNOVAのエンジニアチームは、同国のガルドーネ・ヴァルトロンピア病院のレナート・ファヴェーロ医師から「C-PAPマスクの不足を緩和するためのアイデアがある」との相談を受け、開発に着手しました。
C-PAP(持続陽圧呼吸療法)マスクは、機械で圧力をかけた空気を鼻から送り込み、気道を広げて呼吸を助ける装置です。イタリアは現在、アメリカに次いで感染者が多く(30日時点で約9万8000人)、医療機関でのC-PAPマスクが不足しつつあります。
そこでファヴェーロ医師は「ダイビング用のシュノーケリングマスクが人工呼吸器に利用できるのではないか」と考えつきました。

シュノーケリングマスクには、フランスのスポーツ用品会社・Decathlon(デカトロン)のフルフェイスマスク「Easybreath」が提供されています。
このシュノーケリングマスクと人工呼吸器を繋ぐには、マスクにチューブ接続するためのバルブが必要です。
そこでISINNOVAは、3Dプリント技術を用いて専用のバルブを特注しました。

特注品は、「シャーロット・バルブ」と命名され、特許を取得しています。
すでに研究員を対象とした性能試験にはクリアしており、さらに、地元のキアーリ病院に入院しているコロナ感染者への適応試験にも成功しているとのことです。

しかし、あくまで急を要する際の代用品であるため、性能の点では通常のマスクには劣ります。
ISINNOVAは同社サイトにて、公式の人工呼吸器用マスクがどうしても入手できない場合のみ使用するよう注意書きしています。
マスクおよびシャーロットバルブを入手したい医療機関は「ISINNOVA」へのコンタクトが必要とのこと。
この他にも今、世界中の企業で医療機器不足改善のための取り組みがなされています。、
イギリスの家電メーカー「ダイソン」は、新型コロナウイルス感染に特化した新型の人工呼吸器「CoVent」を10日で設計し、1万台を受注。今後、大量生産する予定です。
掃除機などで知られるメーカー「ジーテック」も人工呼吸器の製造に取り組んでおり、現在2種類の試作品を政府に提出しているとのこと。
この世界規模の危機に各国が力を合わせ、なんとか乗り越えていきたいものです。