雌雄モザイクは「受精ミス」が原因?
性別の決定は、種により少し異なります。
例えば、ヒトでは、両親か1つずつもらった2つの染色体により決められ、ともにX染色体であれば女性に、XとYであれば男性になります。
しかし、ハチの場合は違っていて、オスとメスが交配してできた受精卵から生まれるのはすべてメスです。一方、ハチは未受精卵でも子孫を残すことができ、こちらからは必ずオスが生まれます。
ハチのオスは、もとから父なしで、メスの半分の染色体しか持ち合わせていないのです。つまり、ハチの性別は、遺伝情報の量によって決まるとも言えます。
ところが、オルロイド氏は「極々まれに、すでに受精した(メスになる予定の)卵子に、2番手の精子が潜り込んで、自分自身をコピーし始める」と述べます。
これにより、1つの受精卵の中で、2つの非対称な系統が生まれ、その各々が胚の半分ずつを占め始めます。1つは、オリジナルの精子と卵子が結びついたもの、もう1つは、2番手の精子からのみ生まれた偶発的なものです。
この2番目の精子は、受精する卵子がないため、オスの細胞が残って、成長するというわけです。
「こうした偶発的な二重受精が、ハチの雌雄モザイクの秘密ではないか」とオルロイド氏は推測します。
他方でこの仮説が、今回発見された「Megalopta amoena」にも当てはまるかどうかは不明です。
遺伝子分析には解剖が必要ですが、この1匹しか見つかっていないため、それもできません。
発見された個体はすでに死んでいるため、普通のオスやメスと何か異なる特性を持つのかも謎に包まれています。
しかし、スミソニアン熱帯研究所は、雌雄モザイクのハチが死ぬ前に、睡眠サイクルを調べることに成功しています。
それによると、普通のオスやメスの個体よりも睡眠時間が短く、早く目覚めてエサを探し始める習性を持っていたようです。
ですが、観察例がこの1匹しかいないので、雌雄モザイクに特有の習性か、それとも単にこの1匹が早起きだったのかは分かりません。
雌雄モザイクの秘密を解明するには、もう数匹ほど見つける必要があるようです。