- メントスコーラのファンを自称する研究者が、標高4300mの山頂を含む様々な高度で実験を試みた
- 彼は気圧差の影響データと、発泡で失われる質量の関係から、メントスがなぜこの現象で最適かを特定した
- メントスは、炭酸ガス発泡の核となる表面気泡のサイズと密度が、もっとも理想的な配置をしている
コーラにメントスを入れてみた、という動画は誰もが一度は目にしたことがあるでしょう。
あまりに安く、簡単で、しかも安全に劇的な化学反応を実演できるメントスコーラは世界中の動画製作者や、実験実演者たちに人気の題材となっています。
この基本的な原理は、割と簡単に説明することが可能ですが、微視的なレベルでの現象については、まだ詳細が明らかになっていません。
え? メントスコーラは科学的に未解明なの!? と思うかもしれませんが、こういうのはそこまで本気で研究する人がいないというのが最大の理由です。
しかし、メントスコーラを題材に論文を書く研究者が少なからず世の中には存在しています。
今回の研究者もメントスコーラ研究を更新するために、空気圧の異なる様々な標高でメントスコーラ実験を繰り返し、最後はなんとロッキー山脈を登って標高4300メートルの高地で実験したというのです。
なにがそこまで…と思ってしまいますが、この成果は論文にまとめられ、メントスがこの実験で最適な理由を明らかにしています。
この研究は、メントスコーラのファンを自称する米国スプリング・アーバー大学の研究者Thomas Kuntzleman氏によって発表され、論文はアメリカ化学会の査読付き学術雑誌『Journal of Chemical Education』に2月27日付けで掲載されています。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jchemed.9b01177
メントスコーラ実験
メントスガイザー(ガイザーは間欠泉の意)という名前でも知られているこの実験は、コーラのボトルにラムネキャンディーを放り込むと、間欠泉のように泡が溢れ出すというものです。
利用するコーラはダイエットコーラがもっとも勢いよく吹き出すと言われていて、放り込むキャンディはメントスが最適です。
この現象が発生する理由は単純です。
炭酸飲料は高圧下で溶液中に炭酸ガスが溶け込ませてあります。このガスは空気に触れることで、大気中へと逃げ出していきます。
空気に触れる溶液表面が大きくなればなるほど、逃げ出す炭酸ガスの量も多くなります。炭酸飲料を振ると一気に中身が溢れ出してしまうのも、この作用が原因です。
メントスは多孔質のキャンディで、その表面には細かなたくさんの気泡が存在しています。
コーラにメントスを放り込むと、この小さな気泡を核にして炭酸ガスが気化していくため、炭酸ボトルをシェイクしたのと同じような状態が生み出され、飲料が溢れ出るのです。
この気泡のサイズは、理論上1マイクロメートル(100万分の1メートル)以上である必要があると言われています。
しかし、一個の表面気泡が大きくなれば、その分、表面に作られる気泡の数は減ることになります。
二酸化炭素が溶液から効率よく抜け出すためには、それぞれの気泡に十分な炭酸ガスが流れ込む最適な条件が必要になるのです。
他にもメントスは、溶解した炭酸ガスを抑える水の表面張力を崩す界面活性剤が含まれているなどの要因もありますが、今回の研究では物理的な影響をメインに調べられています。
今回の研究者は、メントスコーラを起こすのに最適な、表面気泡のサイズと密度を明らかにしようとしました。
ですが、この電子顕微鏡レベルの微細な世界を、実験を行った瞬間に見るというのは簡単ではありません。
そのため、ここでの反応を推測できる物理的なデータを集めようと、彼は考えたのです。