石の付着物から用途が判明
さて、問題は「何のために石が使われたのか」ということです。
研究チームは、29個のボール状石器の内、実際に使用された痕跡のある10個を入念に調べました。
すると、石器表面に、動物の骨に含まれる海綿骨やコラーゲン繊維、脂肪分などの付着物が見つかったのです。
これは明らかに、石器が骨を砕く道具として使われたことを示します。
また研究チームは、同じ原料からレプリカをつくって、ボール状石器の有効性をテストしました。結果、骨を砕いて中の髄を取り出すことに成功しており、石器の有効性が証明されています。
研究主任のエラ・アサフ氏は「当時の狩猟・採集社会では、動物の骨髄が貴重な栄養源であったため、石器も重要な役割を果たしたでしょう」と話します。
また、本研究は「動物の骨髄が人類最古の缶詰フードだった」という同チームの先行研究にも繋がります。
ケセム洞窟では、髄の取り出された動物の骨が多数見つかっており、住人たちは食糧難に陥った際の保存食にしていました。
実験では、「骨内部の髄は9週間まで鮮度が保たれる」ことが実証されています。
そして、髄を取り出す際に使われたのが、このボール状石器だったのかもしれません。
研究の詳細は、4月9日付けで「PLOS One」に掲載されています。