現在、ペンシルベニア州立大学(米)により、火星の大気調査を目的とする「ナノカードボード・フライヤー」の開発が進められています。
下からレーザーを照射して温度差による空気循環を引き起こし、それを利用して浮遊するという仕組みです。
動翼部をまったく必要としないため、『2001年宇宙の旅』のモノリスのように空中を移動できます。
また、ショウジョウバエ1匹分ほどの軽さなので、火星への大量の持ち込みも可能です。
「ダンボール」の仕組みを応用
火星の大気調査には、現在、無人航空機である「火星ヘリコプター」の導入が予定されています。
しかし、火星ヘリコプターは重くて仕組みも複雑なため、1機しか持ち込めないのが難点です。火星上で故障を起こせば、代替えがきかず修理もできません。
そこで研究チームは、火星ヘリコプターに代わる機器として、2017年からナノカードボード・フライヤーの開発を進めていました。
ナノカードボード・フライヤーは、名前が示すように、ダンボール紙(cardboard)の技術を応用しています。
2枚の酸化アルミニウム・プレート(厚さ数ナノメートル)の間に、ダンボールと同じ波型構造が挟みこまれているのです。
この技術は「サンドイッチ構造合成材(Sandwich-structured composite)」と呼ばれています。
メリットは大きく2つあって、1つはプレート同士の間が中空になるので、軽量化が可能なこと。そしてもう1つは、中空部分が衝撃を吸収するため、耐久性がアップすることです。
しかし、最も重要な点は、中空構造が浮遊を可能にすることでしょう。