両者の主張は一長一短
並び立つ2つの「睾丸潜伏説」と「睾丸無縁説」。
しかし、どちらの研究にも大きな弱点がありました。
米国の研究では精液中のコロナウイルスが調べられていません。一方、中国の研究では、測定したものがACE2のタンパク質そのものではなく、ACE2をコードする遺伝子の金型(RNA)の量でした。
加えて中国の研究では、軽度な症状の患者からしか精液を採取していなかったのです。
またどちらの研究でも、患者の睾丸の細胞を直に観測しておらず、睾丸中のウイルスの有無に関する決定的なデータが存在しません。
もっとも、この点においては仕方ない部分も存在します。
睾丸の細胞にウイルスが存在するかを確かめるには、睾丸を取り出して、薄くスライスして、顕微鏡で観察しなければなりません。
そしてどちらの研究でも、残念ながら、睾丸を寄付してくれる患者には巡り合えませんでした。