コード化の鍵となったのは知覚以下の神経活動
これまで、麻痺患者から触覚コードを生成するのは不可能だと思われてきました。
多くの麻痺患者は手足の触覚が運動能力と共に失われていたため、皮膚刺激と脳の反応が結びつかず、コードも解読できないと考えられてきたからです。
しかし最新の研究によって、約半数の麻痺患者は、僅かに皮膚と脳の神経接続が残っていることがわかりました。
彼らが自分の手足の感覚が「麻痺」していると思っていたのは、残った神経接続の強度が、脳が自覚できる限界値を下回っていたからだったのです。
実際、これら半数の麻痺患者の手足に皮膚刺激を行うと(患者には自覚がないものの)患者の脳では触覚の領域が反応していることが判明しました。
そこで研究者は、この自覚未満の僅かな神経活性に目をつけました。
これらの僅かな神経接続から触覚を規定するコードを解読・生成し、患者が自覚できるほどコードの出力を増幅し、脳に流し込むことができれば、麻痺患者に触覚が戻ると考えたからです。
触覚のコード化が実現した背景には、神経科学分野での新発見が大きく貢献していたのです。