- 地球規模の歴史的な気候変動を調査する方法の1つに氷床コア年代測定がある
- グリーンランドの氷床では、紀元1000年以降の年代測定に最大4年のズレがあると判明した
- 修正の結果、アイスランド・へラク火山噴火と推定されていた痕跡は、浅間山噴火の可能性が示された
長野県と群馬県にまたがる浅間山は、現在でも噴煙を立ち上らせる活火山として有名です。
浅間山はここ数年間小規模な噴火を繰り返していて、ニュースで頻繁に報道されているので、記憶している人も多いでしょう。
そうは言ってもさほど巨大な火山という印象もないので、「奴は四天王の
しかし、浅間山は今から900年前に史上最大規模の大噴火を起こしていて、なんとその痕跡がグリーンランドの氷床に残されていたことがわかりました。
あまりに壮大過ぎてピンと来ませんが、浅間山はかつて、中世のヨーロッパにまで被害をもたらす大災害を起こしていた可能性があるのです。
研究チームが数々の古い文献の調査から導き出した、浅間山噴火にまつわる歴史ミステリーを追っていきましょう。
氷床コア年代測定の修正
地球規模で起こった気候変動の痕跡は、氷床や氷河の奥深くから見つかる場合があります。
こうした氷床のサンプルを使った古い気候や環境の調査は、氷床コア年代測定と呼ばれています。
ただ、古い記録の正確な日付を特定することは、かなり難しく厄介な仕事で、数年前に発表されたある研究は、グリーンランド氷床コアの年代モデル(GICC05)が、紀元1000年以降では最大4年のズレがあると報告しました。
そして、グリーンランドの氷床コアからは、大規模な火山噴火の痕跡が見つかっています。
噴火で巻き上げられた硫黄エアロゾルが、成層圏に到達した後、地上へ降下して氷の層に長い年月保管されるのです。
しかし、この痕跡についても年代を見直さなくてはならなくなりました。
そこで今回の研究チームが再調査を行ったのが、1104年に起こったアイスランド、へラク火山噴火の痕跡と考えられていた硫黄の層です。
距離的な位置関係から見るとヘラク火山の噴出した硫黄降下物がグリーンランドの氷床に残っているのはもっともだと感じます。
しかし、再調査の結果、この硫黄の沈着は1108年後半から1113年前半まで継続しているものだと判明しました。新しい調査では、ヘラク火山の噴火では年代が合わなかったのです。
そこで研究チームはこの痕跡が何によってもたらされたのか、世界中の文献調査に乗り出しました。