動く物体への給電
ワイヤレス充電では、受電側が動き回ると共鳴周波数の磁場をうまく受け取れないため、給電が格段に難しくなります。
これを解決するためには、受電側に動きを感知して送信側の周波数を修正する回路を組み込む必要があります。
今回の研究チームは新しくスイッチ増幅器を利用したシステムを開発することで、2017年の研究では10%だった送電効率を92%まで向上させることに成功しました。
ただこの新しい仕組みは非常に複雑で、制御は難しいものです。
現在研究チームは、65センチメートルの距離で10Wの電力を送信することに成功していますが、電気自動車に充電を行うためには数百キロWの電力が必要です。
チームはこれを電気自動車に利用できるまでスケールアップすることは可能だと話していますが、単純に技術的な問題だけでなく、コストの問題が大きく実現までにはまだ時間を要することになりそうです。
しかし、このシステムが実装されれば、給電エリアを走っているだけで、高速道路をずっと走行し続けることが可能になります。自動運転技術と組み合わせれば、自動車はかなり便利な乗り物に進化するでしょう。
また、この技術は工場内に充電パネルを設置することで、停止させることなくバッテリーを維持して稼働し続けるロボットやドローンを実現できるといいます。
まだ先の話とはいえ、夢の広がる技術です。
この研究は、スタンフォード大学の科学者、Sid Assawaworrarit氏とShanhui Fan氏の連名で発表され、論文は電気工学関連の成果を取り扱う学術雑誌『Nature Electronics』に4月20日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41928-020-0399-7