- 星間分子雲のチリによって水が生成されることが判明
- 地球の水の起源として新しい有機物説が提唱された
- はやぶさ2が持ち帰る有機物も参考にした水の起源の解明が期待される
「青い惑星」と呼ばれる地球には14億 km3の水が存在しています。
水は地球における生命誕生の起源として重要視されていますが、実はどうやって地球にやってきたのかは分かっていません。
そこで、北海道大学の香内 晃氏らは、星の材料である星間分子雲のチリに着目し、チリ中の有機物を加熱すると水が生じることを発見しました。
この結果から、地球における水の起源は、隕石中の水を含む鉱物や、彗星の核に並び、有機物である可能性が示唆されたとのこと。
2020年末に帰ってくる「はやぶさ2」の有機物サンプルと、今回の研究で得られた知見を組み合わせることで、ついに生命の起源が解明されるかもしれません。
星間分子雲中の有機物を再現。400℃まで加熱して得られた水と石油
宇宙には大量の有機物があり、彗星や星のもとになる星間分子雲中のチリ、隕石にも含まれています。
しかし、水の起源としては彗星中の氷や隕石中の鉱物ばかりが注目され、有機物についての議論はされていませんでした。
そこで、隕石中の有機物(以下、星間有機物)が太陽系内での温度変化とともにどのように変化するか実験で調べました。
宇宙を漂う星間有機物を地球で直接手に入れることはできません。
星間有機物は星間分子雲内で、水、一酸化炭素、アンモニアからなる氷に紫外線が照射されてできたと考えられています。
研究では、まず実験室内でそのプロセスを再現し、模擬星間有機物を合成しました。
その後、ダイヤモンドピルセルという小さくて頑丈な透明の容器で400℃まで加熱。温度ごとにその様子を記録しました(上図)。
上図の写真から分かるように、102℃ではほぼ有機物だけだった容器内に200〜400℃と温度が上昇するとともに、水が生成しています(写真中の泡のような球体が水)。
また、400℃では水とともに黒い液体が生成していますが、化学分析の結果、地球上で算出する石油と同じ成分だったようです。
以上の実験から、模擬星間有機物を加熱すると水と石油が生成されることが確認されました。彗星や鉱物がなくても、有機物があれば地球の水の起源を説明できる可能性がでてきました。
また、有機物を含む小惑星の内部には大量の石油が眠っているのかもしれません。