中南米の熱帯雨林に生息する「グラスフロッグ(アマガエルモドキ科)」は、特徴的な半透明の皮膚を持ちます。
特に下腹の透明度は高く、体内の器官や心臓の鼓動が目に見えるほどです。
しかし意外にも、グラスフロッグの透明性については、あまり研究が進んでいませんでした。「擬態のためだろう」と推測されていながら、その詳しいメカニズムまでは言及されてこなかったのです。
そこで今回、ブリストル大学(英)とマクマスター大学(カナダ)は、フィールドワークやコンピューターモデリングを用いて、グラスフロッグの擬態の秘密を明らかにしました。
その結果、「エッジ・ディフュージョン(輪郭拡散)」と呼ばれる、過去に前例のないカモフラージュをしていることが判明しています。
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完全な透明でなく「半透明」なのはなぜ?
グラスフロッグの皮膚は、まったくの透明(transparent)ではありません。上から見ると、緑の色素がしっかりと確認でき、正確には「半透明(translucent)」と定義されます。
透明度の高い方がカモフラージュには有利と思われますが、陸上では必ずしもそうではありません。
透明度の高い生物は主に海に生息しますが、これは水中と同じ高い屈折率を共有するためです。
「真空中の光速をものの中(媒質中)の光速で割った値」が「屈折率」で、光の進むスピードは、媒質中を通過するときに遅くなります。
そのため、水中は空気中よりも屈折率が高いのです。
クラゲなどの海棲生物は透明度を高めることで水中の屈折率と合わせているのですが、屈折率の低い空気中(陸上)では、透明度があまり意味を持ちません。
それよりも、緑の色素を残すことで、周囲の草や葉っぱにうまく溶け込む方が大切なのです。