なぜ羽ばたくのか?
バットシャドウが最初にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたのは、2017年でした。その約1年後の2018年に再度撮影すると、その影の位置が変わっていたことがわかりました。
現在のところ2枚しか撮影画像がないため、微妙な変化に見えますが、1万7千天文単位(約0.24光年)のサイズのものが羽ばたくように動いているというのは驚くべきことです。
なぜ、バットシャドウの影は動いているのでしょうか?
これはHBC672を取り巻く原始惑星円盤が、ポテトチップスのように歪んだ形をしているためだと考えられています。
では、一体なぜ円盤はゆがんでいるのでしょうか?
1つの説としては、HBC672が連星であり、低質量・低光度の伴星を持っているためだと考えられています。
しかし、今回、バットシャドウの歪みについて新たに研究を発表したのチームは、その可能性が低いと考えています。
もし伴星が存在しているとしたら、その伴星は観測されているよりも円盤の材料をもっと飲み込んでしまっているはずだからです。
チームが新たに提案する原因は、傾いた軌道で回る原始惑星の存在です。
チームの推測では、ディスク平面から非常に傾いた軌道を回る原始惑星があった場合、影を羽ばたかせるような反りを生み出すとしています。
この原始惑星は、少なくとも180日周期で星を回り、太陽と地球とほぼ同程度の距離にあると考えられています。
しかし、現状バットシャドウは2回しか観測されておらず、影の中心にある円盤はあまりに小さいため見ることができません。
正確な原因を特定するのは、難しい状況です。
しかし、もしこれが軌道上の惑星によって引き起こされているならば、羽ばたきは一定間隔で鼓動のように繰り返されているはずであり、その周期性は今後の観測で発見できる可能性があります。
今後稼働するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も、こうした観測を安定して行えるため、この特殊な天体の観測から、原始太陽系における惑星形成の流体力学を学べる可能性があるといいます。
宇宙に羽ばたくバットシャドウ、まだまだ宇宙には不思議な天体が溢れているようです。
この研究は、宇宙望遠鏡科学研究所の研究者Klaus M. Pontoppidan氏を筆頭とする研究チームより発表され、論文は天文学に関する学術雑誌『The Astrophysical Journal』に6月25日付で掲載されています。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab91ae
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