- かつてロジャー・ペンローズは、ブラックホールの回転からエネルギーを取り出せる可能性を示した
- 70年代にこの効果を実験で確認する方法が提案されたが、実現は難しく思考実験に留まった
- 新たな研究は、音波を使った実験で、半世紀越しにペンローズの予想が正しかったことを証明した
ブラックホールは非常に大きな星が超新星を起こした際にできる時空の穴で、光さえ逃れられない巨大な重力源です。
このすさまじい重力の他に、ブラックホールは光速に近い驚異的な速度で回転しているという特徴があります。
1960年代、数学者のロジャー・ペンローズは、このとてつもないブラックホールスピンからエネルギーを取り出せるのではないか、という提案をしました。
永久機関は作れないのか? という議論もありますが、宇宙は人類文明には使い切れないとてつもないエネルギーを持つ天体で溢れています。
ブラックホールからエネルギーが取り出せるとしたら、未来文明はほとんど永久にエネルギー問題を心配しなくて済むようになるでしょう。
これを真面目に検証した実験が行われ、その結果が科学雑誌『Nature Physics』に掲載されています。
ペンローズ過程
ペンローズが考えたのは、ブラックホールの事象の地平面の外側にある、ねじれた時空領域「エルゴ球」からエネルギーを取り出すというもので、ペンローズ過程と呼ばれています。
この考えでは、ゴミを乗せたシャトルがエルゴ球でゴミを投棄し、その後エルゴ球から回収されれば、捨てた質量がエネルギーに変換されて、ブラックホールから取り出せるとされています。
その後、相対論研究者のキップ・ソーンは極めて発展した文明ならば、ブラックホールの周りに都市を築いて、ゴミを捨てることでエネルギーを得ることができる、と発表しました。
これはゴミ問題とエネルギー問題を一挙に解決できる、と驚かれましたが、実際確認することは不可能な理論でした。
いまいち、どういうことかイメージできないのは、ペンローズが数学者であり、これが計算上の理論だからです。この方法では、実際どうやってエネルギーのやり取りをするのかは、具体的に示されていません。
ペンローズのこの考えは本当に正しいのでしょうか? 多くの人々が実際に検証してみたいと考えました。
しかし、問題はどうやってこの効果を実験で確認するのか? ということです。
実際ブラックホールへ行って実験するわけには行きません。類似したプロセスを地球上で検証する方法が必要になってくるのです。