- ハッブル宇宙望遠鏡が2度に渡り撮影した「バットシャドウ」は、羽ばたいていることがわかった
- これは若い星をチリとガスの円盤が歪んだ形で取り巻いているためと考えられている
- 新たな研究はこの円盤の歪みが、180日周期で回る原始惑星が原因の可能性を指摘している
NASAのハッブル宇宙望遠鏡は、まるでコウモリが翼を広げたような奇妙な影を1400光年彼方の宇宙で発見しました。
この天体は404日後、再度観測されましたが、なんとそれは以前観測されたときと、影の位置が変わっていたのです。
コウモリの影のように見えることから「バットシャドウ:Bat Shadow」と名付けられたこの天体は、なんと驚いたことに本当に宇宙で羽ばたいていたのです。
バットシャドウの影の長さは約1万7千天文単位(太陽系の200倍 ちなみに太陽から冥王星は39天文単位)もある、非常に巨大なものです。
一体なぜ、宇宙にこんな途方もない大きさの影ができるのでしょうか? そしてなにが、そんな巨大な影を羽ばたかせているのでしょうか?
宇宙に影ができる理由
なぜ宇宙にコウモリの様な影ができるのでしょう? 宇宙人がバットマンに助けを求めているのでしょうか?
バットシャドウの中心にあるのは、誕生から200万年ほどしか経っていない非常に若い星「HBC672」です。
若い星の周りでは、吸い寄せられたチリやガスが円盤状に取り囲んでいます。
これは原始太陽系と同様の状態で、この巻き込んだチリやガスがやがては惑星を形成し、1つの星系へと成長していくと考えられています。
HBC672は、非常に初期の段階にある星のため、原始惑星円盤がまるで円筒形のランプシェードのように周囲を覆っているのです。
このため星の光は円盤の上部と下部の極方向からしか出られません。
綺麗に影が観測できるのは、この星の周りの広い範囲を反射星雲が覆っているためです。
反射星雲とは星に照らされた光を反射して輝く星雲のことです。対照的な存在として、自ら輝く輝線星雲というものも存在します。
星が非常に高温の場合、周囲のガスを電離させて輝線星雲を作り出しますが、今回の場合はそこまで星が高温ではなかったのでしょう。
こうした反射星雲の存在によって、上の画像のように壁紙に光が反射するように、光と影のコントラストが地球からでもはっきり見えたのです。