不確定性原理の突破
続いて研究チームは、検出装置に含まれる搾り器を調整することで、ゆらぎ幅の観測精度を高めようと試みました。
検出装置には搾り器(squeezer)と呼ばれるノイズ削減装置が取り付けられており上の動画の青い線のように「量子力学的な」ノイズを減らすことが可能です。
研究チームは、搾り器の角度を12段階に変えて実験を行ったところ、ノイズの様々な分布とミラーの動きの間の相関を測定できることを発見しました。
そしてこの相関関係を利用して再度実験を行った結果「巨視的な物体のゆらぎ幅のコントロール」に成功し、鏡のゆらぎ幅を通常の70%まで抑えることに成功しました。
さらに驚くべきことに、このゆらぎ幅の最小値は、不確定性原理によって制限されてきた標準的なゆらぎ幅を下回っていたのです。
巨視的な物体にも既存の微視的な不確定性の数値がそのままあてはまるかどうかは非常に興味深い点と言えるでしょう。
研究チームは今回の研究結果をさしあたっては、LIGOの測定精度を上げ重力波の検出に利用するとのこと。
研究チームの目的は重力波の検出であり、巨視的な物体のゆらぎについては、他のプロジェクトを立ち上げる必要があるのかもしれません。
研究内容はMIT(マサチューセッツ工科大学)のHaocun Yu氏らによってまとめられ、7月1日に世界で最も権威ある学術雑誌「nature」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2420-8
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