どうやってエニオンの存在をとられたか?
エニオンの存在は40年前に理論が提唱されましたが、長い間、存在の確認には成功しませんでした。
そのため、科学者のなかにはエニオンは単なる数学上の概念に過ぎず、現実世界に存在する粒子ではないと考える人もいたそうです。
しかし、理論の提唱から20年が経過した2005年に、エニオンが現実世界に存在する可能性が示されました。
そこで今回、アメリカの研究チームはエニオンの直接観測に乗り出し、長年放置されてきた物理学者の宿題を終わらせたのです。
エニオンの存在を確認するには、エニオンが現れると予想されている2次元的な薄いシートを作成する必要があります。
そのため研究チームは、ヒ化ガリウムとヒ化アルミニウムガリウムの薄層からなる構造を製造することで、電子が2次元的に動く環境を整えました。
またこの薄膜を絶対零度近くまで冷却し、さらに強力な磁場を追加して内部を絶縁体にし、外部だけに電流が流れるように設定します。
このように手の込んだ方法で2次元を周回する回路を作り、効率よくエニオンを捕られる環境を作り出しました。
また、エニオンは不思議な振る舞いをすると予想されていました。
上の図の左側が示すように、2次元的なシートの内部で動くエニオンにとって、2つのエニオンの回転的な位置替えは、一方を中心として他方がその周りを周回する移動と同じ(トポロジー的に等価)とされるのです。
そのため、上の図の右の回路のようにエニオンを装置内部で回転するように流すと、現実の世界の絶縁状態にある装置中心部に、電荷をもったエニオンが集積していくのです。
観測装置には、この内部に溜まったエニオンを検出する能力も備えられていました。
装置を稼働させた状態で検出装置で調べると、装置内部でのエニオン電荷の出現と消滅の直接的証拠となるパジャマストライプと呼ばれる干渉パターンが生成されていることが確認できました。
このパターンは、エニオンの存在が確認された証拠として非常に強固なものと考えられています。
今回の研究によってエニオンの存在が確認されたことから、今後はエニオンを使った電子部品ならぬ、エニオン部品やエニオン量子コンピューターの製造が期待されます。
そうなれば、電子をつかった機器が時代遅れと言われるような日が来るかもしれません。
研究内容はアメリカ、パデュー大学の中村氏らによってまとめられ、6月26日にプレプリント版が「arXiv」に、またプレプリント版を元にしたニュースが7月3日に学術雑誌「Nature」で紹介されました。
https://arxiv.org/pdf/2006.14115.pdf
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01988-0
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