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従来の理論を改良し、生物の「美しく不完全な模様」を再現 / Credit:Canva
physics

生物の模様はなぜ”美しく不完全”なのか?「反応拡散系」に新要素を追加し再現

2025.11.06 20:00:34 Thursday

ヒョウの斑点やハコフグの六角模様は、多様でユニークです。

よく観察すると、それぞれの模様が“整っているのに少しズレている”といった自然なゆらぎを持っています。

動物たちの模様がどのようにして生まれ、その美しい不完全さがなぜ現れるのか、長年多くの研究者が挑んできました。

そして今回、アメリカ・コロラド大学ボルダー校(CU Boulder)の研究チームは、生物の模様生成を説明するモデル「反応拡散系」をさらに進化させ、“自然界のゆらぎ”を再現できる新しいモデルを発表しました。

この成果は2025年10月27日付の学術誌『Matter』に掲載されました。

How animals get their spots, and why they are beautifully imperfect https://www.colorado.edu/today/2025/10/27/how-animals-get-their-spots-and-why-they-are-beautifully-imperfect How animals really get their ‘perfectly imperfect’ spots and stripes https://newatlas.com/biology/animals-spots-and-stripes-simulation/
Imperfect Turing patterns: Diffusiophoretic assembly of hard spheres via reaction-diffusion instabilities https://doi.org/10.1016/j.matt.2025.102513

動物模様の再現に挑む!従来のモデル「反応拡散系」とは

自然界には、整然とした美しさと、絶妙な“不完全さ”を併せ持つ模様があふれています。

シマウマの縞やヒョウの斑点、ハコフグの皮膚の六角模様など、一見すると規則正しく見えますが、よく見ると一本ごとの太さや間隔、斑点や六角形の大きさや形が微妙に違っていることに気づきます。

こうした“美しく不完全な模様”が、どのような仕組みで生まれるのか。

その基本的な理論は、1952年に数学者アラン・チューリングが提唱した「反応拡散系」にさかのぼります。

彼は、「組織が発達するにつれて化学物質が生成され、コーヒーにミルクを一滴落とすとそこから模様が広がるようなプロセスで、体内に拡散されていく」という仮説を立てました。

体内で広がる化学物質の濃度が細胞のふるまいを変化させ、それぞれの場所で素が生まれたり抑えられたりして、模様が自然に現れるというのです。

この理論は、シマウマの縞や魚の模様など、実際の生き物のパターン形成を説明するのに役立ってきました。

しかし、計算機で反応拡散系をシミュレーションしてみると、ミルクとコーヒーの境目がなくなっていくように、どうしても「模様の輪郭がぼんやりしてしまう」という問題が生じました。

また、「斑点や縞の大きさや間隔が均一になりすぎてしまう」ことも課題でした。

自然界で見られるような、“粒々の質感”や“細かいズレ”“途中で模様が途切れる”といった要素までは、従来のモデルでは再現できなかったのです。

このような限界を乗り越えるため、コロラド大学ボルダー校の研究チームは「自然の模様がなぜ“美しく不完全”なのか」を数理モデルで解き明かすことに挑みました。

次ページ反応拡散系を改良し、「美しく不完全」な動物模様の再現に成功

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