激しい痙攣で身体が硬直?
一方、「叫ぶ女のミイラ」は、ペンタウアより恐ろしい表情を留めています。
顔は右に傾き、胴体は硬直して、足は交差するようにねじ曲がっていました。
大きく開かれた口元は、苦痛の表情を示しています。
研究チームのザヒ・ハワス氏とサハール・サレーム氏は「この女性もペンタウアと同じく乱雑に扱われた可能性がある」と考え、調査を開始しました。
CTスキャンおよびDNA分析の結果、女性は約3000年前に60代で亡くなり、ペンタウアと違って、内臓が取り除かれて香料や樹脂などが入れられ、丁寧な防腐処理が施されており、高価な純リネンで包まれていました。
またコンピューター断層撮影によると、女性は「アテローム性動脈硬化症」を患っていたようです。
この病気は、大動脈・脳動脈・冠動脈といった太い動脈に起こる硬化症で、動脈の内壁にコレステロールなどからなるドロドロした脂質(アテローム)がたまり、重症化すると狭心症や心筋梗塞、脳梗塞を起こします。
アテローム性動脈硬化症は、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、運動不足、座る時間が長い生活などが主な発症原因です。
この女性の場合は、動脈硬化による心筋梗塞が死因と見られ、死の直前に激しい痙攣を起こしてそのまま硬直したのでしょう。おそらく、死後何時間も発見されずに放置されたことで、身体が元に戻らなかったようです。
王族ならではの贅沢な生活習慣が祟ったのかどうかは不明ですが、ペンタウアのような罪人ではなかったと思われます。