なぜ小惑星のシャワーが降り注いだのか?
地球と月に降り注いだ小惑星の破片は、どこから来たのでしょうか?
原因は、巨大な小惑星が他天体との衝突などによって砕けたためだと考えられます。
月に確認された最大の痕跡は直径93kmにも及ぶコペルニクスクレーターで、これを形成するには母天体は100km以上の大きさが必要だったと考えられます。
ちなみに100kmクラスの小惑星が衝突して砕けるという出来事は、10億年に1度くらいの頻度で起きていると考えられています。
また、多くが地球に降り注いでいることから、小惑星が砕けた場所は他の惑星と重力的に共鳴を起こしている不安定な軌道上(共鳴軌道)だったと考えられます。
この母天体の有力候補として考えられるのが、8億3千年前に分裂して半分近くの破片を小惑星帯から失った「小惑星Eulalia(オイラリア)」です。
類似した軌道要素を持つ小惑星の集団を小惑星族と呼びます。これは多くの場合、同じ母天体の破片です。
そのため、8億年前地球に降り注いだ小惑星群はEulaliaファミリー(オイラリア族)の小惑星だったということになります。
そして興味深いことに、現在「はやぶさ2」が調査中の小惑星リュウグウや、NASAの「OSIRIS-Rex」が調査中の小惑星ベンヌは、反射スペクトルなどの解析から、やはりオイラリア族の小惑星だと考えられているのです。
このことから、約8億年前の太陽系では巨大小惑星オイラリアが他の小惑星との衝突で大規模に破砕し、一部の破片は地球周辺の惑星や太陽に降り注いだのでしょう。
また、他の一部はオイラリア族として小惑星帯に残り、残りの僅かな一部が地球近傍小惑星へと軌道進化したと予想されるのです。
「はやぶさ2」は2020年冬にリュウグウの試料を持って地球に帰還します。そのサンプルを調べれば、月に衝突した小惑星と、地球近傍を回るリュウグウの関連性も明らかになるかもしれません。
この研究は、大阪大学大学院理学研究科の寺田健太郎教授らの研究チームより発表され、論文はオープンアクセスのオンライン科学雑誌『Nature Communications』に7月22日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41467-020-17115-6
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