- JAXAの探査機「あかつき」が、金星の雲に隠れた下層で巨大な波動を確認した
- 下層大気は7日間で惑星を1周するが、この波動はそれより速いため大気の移動とは異なる
- 大気重力波の1種ケルビン波と考えられ、スーパーローテーションの動力源の一部の可能性がある
大きさや質量が地球に近いことが、地球の双子星とも呼ばれる惑星、それが金星です。
しかし、双子と称される割に、金星は地球から見ると飛んでもない環境をしています。
上層では自転の60倍という猛烈な速度で大気が移動するスーパーローテーションと呼ばれる風が吹き荒れ、地表の気温は鉛も溶ける465℃という高温です。
さらに地表付近の大気圧は90気圧(地球の90倍)に達していて、その大気はほとんどが二酸化炭素で、惑星を覆う分厚い雲は硫酸を含みます。
そして、この分厚い雲の影響で金星大気の深部の様子はほとんどわかっていません。
ところが、JAXAの金星探査機「あかつき」が、高度50kmという分厚い雲の奥にある金星の下部雲層から、惑星規模の巨大な波動現象を発見しました。
「雲の不連続面」として観測されたその現象は、惑星の南北に渡って7500km近くもの巨大さまで発達し、時速330kmという速さで星を駆け巡っていったとのこと。
しかもこれはどうやら何十年もの間消えることなく、恒常的に存在し続けているもののようなのです。
金星下層に潜む雲の不連続面
「雲の不連続面」は金星の赤道を挟んで、南北に7500km以上の大きさで存在しています。
また、この不連続面が惑星を回る速度は時速330km(5日間で惑星を1周する速さ)という猛烈なスピードで移動していることもわかりました。
金星の高度70km付近では4日間で惑星を1周する猛烈な風、スーパーローテーションが吹いていますが、高度50km付近の雲は、惑星を1周するのに7日かかります。
赤道ジェットは5日間ほどで惑星を1周するほど速くなることもありますが、これは永続的に吹く風ではありません。
今回の雲の不連続面は、過去にさかのぼって調査したところ、1983年の金星画像にも同じ構造が映っているとわかりました。
すなわち、この巨大構造は35年近くに渡って人類に気づかれることなく、準永続的に存在していた現象なのです。
移動速度や永続的な構造から推測すると、「あかつき」が観測した惑星規模の波動現象は、大気そのものの移動ではないと考えられます。なんだかわからない「何か」の波動なのです。