2005年に初確認された火星のミステリアスな発光現象。
その詳しいメカニズムが、2014年から続くNASAの火星探査機・MAVENのデータから明らかになってきました。
この現象は、太陽が沈む日没後に毎日発生し始め、オーロラのように火星の広い範囲を覆うように揺らめきます。
調査の結果、発光には窒素と酸素の結びつきによる一酸化窒素の生成が関係していたようです。
研究は、米・コロラド大学ボルダー校により報告されています。
発光のメカニズムが判明!正体は「一酸化窒素」
MAVENは、2014年以来、1日に5回、紫外線分光器を使った火星の撮影を続けています。研究チームは、そのデータをもとに初めて発光現象のメカニズムを突き止めることに成功しました。
そのプロセスは以下の通りです。
まず、日中の太陽光によって、火星大気中のCO2、O2、N2が分裂し、窒素(N)と酸素(O)原子が作られます(下図1)。それらが上空の大気流に乗って火星の夜側に移動(下図2)。
夜側に向かうにつれて気温が急落し、窒素と酸素を含む大気流の高度が、高域と低域の間の中間層まで下がります。この中間層で、窒素と酸素が結合して一酸化窒素が作られ、それが紫外線を放って光となっていたのです(下図3)。
こうした光を「大気光(Nightglow)」と呼びます。
窒素と酸素が結びつく同様の大気光は、金星でも確認されていますが、金星は近赤外線であるのに対し、火星は紫外線の形で発光します。
そのため、これらの大気光は、地球のオーロラのように肉眼で見ることはできません。