浮遊する液層の底にも浮力が働く
この段階でもかなり高度な研究ですが、フォート氏はさらに一歩、考えを進めます。
浮遊した液体の上側だけでなく、下側でもヨットが浮く可能性があったからです。
浮力は古代ギリシャの数学者であり発明家であるアルキメデスによって発見されたその物理法則であり、密度の高い物体が沈み、密度の低い物体が浮く原因となります。
フォート氏は、この浮力の結果生じる浮き沈みが、浮遊する液体の上側だけでなく、下側にも発生すると直感。そしてその場合、船は逆さに浮かぶと考えました。
実験を行った結果、予想は見事に的中しました。
浮遊する液体の下で、ヨットが重力に抗って逆さに浮んだのです。
ヨットが液体の下にある場合にも、浮力はヨットを下から上に、押し上げる効果がありました。
この押し上げる浮力の力と重力による引き落としの力が拮抗した状態になると、船は液体の下側で逆さまに浮かぶことができるのです。
そのため船の浮力が大きすぎれば、逆さまの船は「上に向かって沈み」、浮力が少なくなれば重力に引かれて「水槽の下に落下」します。
上が下で下が上というような厄介な話ではありますが、実は原理は上の図のように至極簡単なものになります。
浮力は液体の上でも下でも船を上側に引き上げ、重力は液体の上でも下でも船を水槽の底に落とそうとする…という2つの基本的な事実は変りません。
問題は、その拮抗がどこで行われるかだけになります。
液体の上側で2力が拮抗すれば、普通の船のように浮かび、液体の下側で拮抗すれば逆さ船が浮かぶことになるのです。