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「ビッグバンは起きていない」。物理学者が宇宙誕生前の痕跡を探る!

2017.12.03 Sunday

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Credit: phys.org

ビッグバン理論は、宇宙の誕生と進化を説明するのに最も広く認知されています。しかし、科学者の間では、この理論について意見の一致がほとんどありません。

ブラジルの物理学者ジュリアーノ・セザール・シルバ・ネーベスが属する研究グループでは、宇宙誕生の別モデルの構想に挑んでいます。General Relativity and Gravitation(一般相対性理論と重力)誌で先日発表した研究において、ネーベスは、標準的宇宙論モデルの鍵になる「ビッグバンという時空の特異点」はもはや必要ないと提言しました。これに加えて、ネーベスは、時間に始まりがあったとの説に異を唱え、宇宙には現在進行中の膨張過程の前に収縮過程があった可能性を再提起しています。

Source: Bouncing cosmology inspired by regular black holes – General Relativity and Gravitation
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10714-017-2288-6

ビッグバンは起きていない?

「そもそも、ビッグバンなど起きていません」

カンピーナス大学 数学・統計学・科学技術計算研究所(IMECC-UNICAMP: University of Campinas’s Mathematics, Statistics & Scientific Computation Institute、ブラジル・サンパウロ州)研究員である物理学者もこう断言しています。

ネーベスの立場では、時空に高速膨張段階があるのならば、それに先立つ収縮段階があった可能性も考えることになります。そして、収縮から膨張に段階が切り替っても、収縮段階の痕跡が消えるわけではありません。

「物理学と時空幾何学」プロジェクトでの取組による研究論文では、宇宙の幾何学を記述する一般相対性理論方程式の解について考察した後、宇宙膨張率を時間だけでなく宇宙スケールでも計量する「スケール因子」の導入が提唱されています。「ビッグバンがあったとする標準的宇宙論では、宇宙膨張率を計量するのに、宇宙時間だけに依拠した数学的関数を用いています」と述べた上で、ネーベスはアルベルト・バスケス・サー教授(IMECC-UNICAMP)と共にこの問題について詳述しています。

スケール因子を導入すれば、宇宙論的特異点であるビッグバン自体は、宇宙が膨張を始めることの必要条件でなくなります。不定性を表現する数学の概念から借りた「特異点」という言葉は、宇宙学者が138億年前の宇宙の原初状態を特徴づけるために用いたものです。原初宇宙は、全ての物質やエネルギーが無限の高温高密度状態に圧縮され、従来の物理学的法則を全く適用できない世界です。

ビッグバン理論の起源は1920年代後半、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが、ほぼ全ての銀河が互いにかつてない速さで遠ざかっていることを発見したことに遡ります。そして、1940年代以降、科学者らが、アインシュタインの一般相対性理論に基づき、ビッグバン後の宇宙進化の詳細モデルを構築しました。このモデルから、宇宙の結末として考えられる3つの可能性が導かれました。

①無限の加速膨張
②膨張の永続的停滞
③自身の質量が持つ重力によって膨張から収縮に反転する収束過程(ビッグクランチ)

です。

「特異点やビッグバンの考えを斥けることで、反跳する宇宙が宇宙論の理論的俎上に上がります。そして、時空の開始に特異点を想定しないことで、宇宙進化の過程が収縮から膨張に変化しても収縮過程の痕跡は残り、現在膨張中の宇宙においても我々はその痕跡を確認できるという可能性が開けてくるのです」とネーベスは言います。

ネーベスが構想する「反跳する宇宙論」は、次のような仮説に基づきます。すなわち、宇宙はビッグクランチ後、その収束過程をまた反転するために密度・温度の極限状態を作っては、再び反跳して膨張過程に移行するという形で、膨張と収縮を永続的に繰り返すのです。

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