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「ビッグバンは起きていない」。物理学者が宇宙誕生前の痕跡を探る! (2/2)

2017.12.03 Sunday

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収縮の痕跡を探せ!

ネーベスは、ブラックホールを起点にして「反跳する宇宙」の理論的探究を開始します。「ひょっとすると、膨張し続ける現宇宙にも、その前段階である収縮過程で生じて反跳の衝撃を無傷のまま潜り抜けてきたブラックホールがその痕跡を残しているかもしれません」とネーベスは言います。

ブラックホールは、巨星爆発後に残る内破したコアから成り、そのコアが特異点を持つまでに収縮した天体です。この特異点は、密度と重力が無限大であることが確認されています。そのため、あらゆるものが、光さえ、ブラックホールからは脱出できません。

ネーベスによれば、ブラックホールを特徴づけるのは、特異点でなく、むしろ事象の地平面です。それは、あらゆるものを呑み込んで圧し潰してしまう特異点の引力から脱出できなくなる帰還限界点を示す境界面です。「通常のブラックホールにおいて、事象の地平面の外部で大きな変化はありませんが、その内部では様々な変化が深在しています。特異点を持たない別の時空が存在するのです」。

ネーベスとサーが定式化したスケール因子は、アメリカの物理学者ジェームズ・バーディーンから発想を得たものです。バーディーンは1968年、ある数学的方略を用いて、ブラックホールを記述する一般相対性理論方程式の解に変更を加えました。その方略は、ブラックホールの質量を、それまでのように定数と見るのでなく、中心部までの距離に依拠した関数と捉えるものです。この変更された方程式の解から、ブラックホールの新たな姿が立ち現れました。これを「通常のブラックホール」(a regular black hole)と名付けます。

「この“通常のブラックホール”は容認可能です。一般相対性理論に反しないからです。それに、この考えは決して新しいものでなく、この数十年の間に幾度も検討を重ねてきたものです」とネーベスは言います。

数学的方略を一般相対性理論方程式に盛り込むことで、通常のブラックホールに特異点を想定する必要がなくなりました。そのため、ネーベスは、これと似た方略を編み出し、通常の反跳における特異点も斥けることを考えました。

現代科学において、理論は、それがいかに立派で刺戟的なものでも、実証できなければ無価値です。特異点のないビッグバンの仮説をどう検証するのでしょうか。「膨張中の現宇宙にも残存する可能性のある、収縮過程における事象の痕跡を探します。その対象には、反跳を潜り抜けてきたと考えられる収縮過程からのブラックホールの残余物も含みます」とネーベスは言っています。

via: phys.org / translated by 羽鳥浩太郎

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