暴行と誘拐が起きていた
数年にわたる観察の結果、隣接する2つのコロニーのうち、一方の「女王ネズミ」が顔に深い傷を負っていることを確認しました。
巣の内部における女王ネズミの存在は絶対であるため、明らかな外傷はもう一方のコロニーからの攻撃があったことを意味します。
しかし翌年になって、より興味深い事実がみつかります。
襲撃されたコロニーに属していたはずの2匹の子ネズミが、襲撃した側のコロニーの「働きネズミ」として生きていることに気付いたからです。
研究者たちははじめ、標識タグの付け間違いを疑いました。
しかし双方のコロニーから採取されたDNAを分析した結果、この2匹の子ネズミの遺伝子が顔に傷をつけられた被害者側の女王ネズミの子であると判明します。
この事実は、襲撃者側は単にライバルの巣の構成員を攻撃するだけでなく、離乳していない「赤ちゃん」を誘拐することで、自分たちのコロニーの労働力を増加させていたことを意味します。
同じような習性を持つ生物として「サムライアリ」が知られています。
サムライアリも他のアリの巣を襲撃し、サナギをさらうことで、自らのコロニーの労働力とする奴隷狩りの習性があります。