初期の月の磁場
地球のコアは溶けた鉄とニッケルで出来ており、その流動が磁場を生み地球を取り巻く磁気圏を作り出しています。
これは太陽風によって飛ばされてくる放射線から地球の表面を守り、大気が宇宙へ吹き飛ばされるのを防いでいます。
一方、月のコアは小さいため、地球のように長続きする磁場は持てなかっただろうというのが、一般的な科学者たちの見解です。
しかし、かつて月も磁場を持っていたという証拠がアポロ計画から確認されています。
アポロ12号は月に磁力計を持っていき、月面の磁場が0ではないということを発見しました。それは地球磁場の1000分の1程度のものでした。
現在の月に磁場は存在していないので、これは月面の岩石に保存されたかつての月の磁場の記憶と呼ぶべきものです。
それがどのようなものであったかは、月の岩石サンプルを地球へ持ち帰り、これを分析して岩石内部の磁化された痕跡を抽出して研究する必要がありました。
幸いアポロは大量のサンプルを地球へ持ち帰ってくれました。これが現代技術で分析され、かつての月の磁場の様子が明らかになってきたのです。
研究の結果、月の岩石のいくつはかなり強力に磁化されていることがわかりました。ここから、月の磁場は約35億年前まで地球と同等の強さを持っていたと考えられるのです。
月は地球同様に形成当時は非常に高い熱を持っていました。それはオーブンから取り出されたばかりのケーキのようなものです。これは質量が大きいほど冷却に時間がかかります。
地球は現在もまだコアに熱が残っていますが、月はそれほど長くは持ちませんでした。しかし、小さな月のコアも初期のころは熱く流動しており、磁場を生み出していたのです。