脳のパフォーマンスとは?
さて、ここでこれまでに多くの人が感じたであろう「脳パフォーマンスのピークは本当に35歳なのか?」という疑問についても取り上げましょう。
そもそも、今回の研究が示す「ピーク」を正確に表現するなら、「チェスにおいて、脳がコンピュータの答えと最も一致する年齢」となるでしょう。
コンピュータの方が人間より強いのは事実ですが、人間同士の対戦では必ずしもコンピュータのプレイを完全に模倣することが勝利に繋がるわけではない、との指摘もあります。人間とコンピュータではチェスに対する思考の仕方が異なるのでしょう。
また、さらに広い分野で考えると、このピーク年齢は参考程度にとどめておくのが良いかもしれません。
確かにチェスでは35~45歳をピークとしてとらえても良いでしょう。将棋や囲碁なども同様かもしれません。
ただし、これは64マス内で6種類16駒の最善な動きを求める限定的な脳パフォーマンスのピークです。
比較にならないほど多種多様な人々、性格、言語、経済、社会構造、感情などが含まれる人生の判断において、35歳が最も良い決定ができる年齢だとは限りません。
多くの分野ではすべてを計算できないため、知識や経験の蓄積が最善の判断を下すのにより役立つことでしょう。
また瞬発的な判断が必要とされる分野も、チェスのピークとは異なってくるはずです。
さて、このように脳のパフォーマンスは単純に計測することはできません。それでも今回の研究は、思考的な分野において力を傾けるべき時期を示しています。
特にチェスプレイヤーの方は人生を決定するための1つの基準にできるでしょう。