脳に電流を流して選択に介入する

他者による選択の制御を実現するにあたって、研究者はより人間に近いマカク属のサルの脳に電極を埋め込み、異なる味のジュース(AとB)を飲ませる実験を行いました。
ジュースAとジュースBの組み合わせはレモネード、ペパーミント、塩水、フルーツポンチなど様々な味の中から選ばれ、サルたちは提示される2杯のどちらか一方を選択することで、その味のジュースを手に入れることができます。
またこのとき、ジュースAはジュースBに対して常においしい味に調整されています。
そのため通常時、サルたちはおおむねジュースAに相当する味を選択しました。
しかし研究者が脳に埋め込んだ電極から電流を流すと、変化がうまれます。
選択をつかさどる中枢に強い電流が流れると、サルは本来好きでない方のジュースBも選ぶようになったのです。
この事実は、電極からの電流の介入によって、ジュースAとジュースBの正常な活動比較が妨げられていることを意味します。
一方で、適正な電流を流した場合、元々の好みであるジュースAの選択頻度をさらに上昇させられることもわかりました。
適正な電流は2つの回路の活動を共に高めましたが、同時に活動の差も広げていたのです(ジュースA回路がジュースB回路よりも伸びがよかった)。
また別の実験ではジュースAとジュースBが一つずつ提示され、サルたちに時差をつけた選択機会が与えられました。
この実験では、サルが一方のジュース(例えばA)を検討している間に強い電流が脳に注がれます。
すると興味深いことに、サルは別のジュース(B)を選択するのです。
この事実は、検討中の脳回路に強い電流が流れ込むと、計算が中断され、検討していた方のジュースに対する魅力が失われることを意味します。