肝臓だけに頼るより3倍速くアルコールを体内から除去できる
安全に過呼吸状態を作り出す方法を手に入れた研究チームは、5人の成人を使って実験を試みました。
ウォッカベースの飲料1杯を飲んでもらった被験者を過呼吸状態にし、血中アルコールの排出量を観測したのです。
すると、通常肝臓のみで代謝した場合に比べて、血中アルコール排出率は3倍以上に上昇していました。
これはまだ実験室で行われた非常にサンプルサイズの小さい概念実証(新しいアイデアを試す実験)に過ぎませんでしたが、非常に明確な結果がでました。
これまでは肝臓のワンオペ状態だった血中アルコールの除去に、肺が有効なサポートをしてくれると確認されたのです。
「クリアメイト」は非常にローテクな器具で、コンピューターやフィルターも必要ないため、世界中のどこでも簡単に製造できるといいます。
こんな簡単な方法でアルコールの除去速度を大幅に改善できるというのは驚きの一言で、フィッシャー博士も「なぜ何十年もの間、この方法が試されなかったのか本当に不思議です」と語っています。
チームは今後、より広くこのプロセスをテストするため、臨床試験を準備中だとのこと。
急性アルコール中毒は、自分の飲酒量を把握できていない若い世代に特に多くの被害が出ている症状です。
アルコール・ハラスメントという言葉も定着し、昨今は無理に飲酒を強要したり、無茶な飲み方をする場面は減った印象もありますが、東京消防庁のデータでは、令和になっても急性アルコール中毒で救急搬送される人の数は減っていません。
お酒は少量でも判断力の低下や協調性の低下を招くことが、今回の論文でも指摘されていて、調子に乗って飲みすぎてしまう人根本的に減らすことは難しいのかもしれません。
過度な飲酒を自重することが最大の予防ではありますが、強要により急性アルコール中毒で死亡するという不幸な事故も起こっています。「クリアメイト」が各居酒屋に常備されるようになれば、急性アルコール中毒の被害は多少は緩和されるのではないでしょうか。