太陽系でもっとも古い物質「高アルミニウムカルシウム含有物(CAI)」
太陽系でもっとも古い物質とされているのが「高アルミニウムカルシウム含有物(CAI:calcium-aluminum–rich inclusions)」と呼ばれるアルミニウムとカルシウムを豊富に含んだ白い物質です。
このためCAIは単一の物質のことではありません。原始太陽系の太陽近くで高温によって凝縮した鉱物の集合体です。これは原始惑星系円盤の中で形成され、太陽系のあちこちへ運ばれて炭素質コンドライト隕石(もしくはその母天体)へ降着していったと考えられています。
CAIは地球に落下した隕石から発見されています。メキシコのチワワ州で発見されたアエンデ隕石にもCAIは多く含まれており、これは45億6700万年前に形成されたとされています。
LLNLの研究チームは、このアエンデ隕石から採取したさまざまなCAIのモリブデン同位体組成というものを測定しました。モリブデン同位体の組成比を調べると、それぞれのCAIが太陽系のどこが起源なのかを知ることができます。
こうした調査を行った結果、見つかったCAIのモリブデン同位体の組成は、太陽系で見つかるすべての物質の組成をカバーしているとわかったのです。
つまりCAIという物質が、太陽系形成時のある一時期に、原始惑星円盤内で生まれたわけではなく、太陽系が形成される全ての期間を通して形成されていたと示されたのです。
このことからCAIが形成された期間を調べれば、それは太陽系が形成されるまでの期間と一致すると考えられます。
CAIが形成された期間は約4万年から20万年の間ということが分かっています。これはつまり太陽系の物質が構成され膠着するまでの期間は、およそ20万年程度だったということになるのです。
太陽系の形成が20万年未満という短期間で行われたことは驚くべき事実です。
このことについて、今回の論文の筆頭著者でありLLNLの研究者グレッグ・ブレネッカ博士は「人間の妊娠期間が10カ月と思っていたものが12時間だったようなものだ」とその発見の驚きについて述べています。