67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の調査
今回の研究が報告するのは、1969年にロシアの科学者によって発見された、6年半の周期で太陽を回る67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星です。
2014年に欧州宇宙機関(ESA)の探査機ロゼッタが到達し、彗星着陸なども含めた詳細な調査が行われています。
彗星が重要な調査対象とされるのは、彗星が太陽系の外縁オールトの雲やエッジワース・カイパーベルト帯からやってくるためです。そこは太陽系形成時の熱的変成を受けなかった領域で、彗星は太陽系初期の情報を保存したタイムカプセルと言えるのです。
そしてこの彗星は、初期地球に生命の原料となる有機物や海洋の元となった水を供給した可能性が高いと考えられています。
生命誕生に重要とされるのは、炭素、水素、窒素、酸素、リン、硫黄という6つの元素です。この内、炭素、水素、窒素、酸素は彗星によく見られる主成分です。
硫黄については、これまでの調査で67P彗星から検出されていました。
ただ、リンだけは宇宙でも非常にまれな元素であり、彗星からもまだ発見されていなかったのです。しかし、リンは生命の細胞やDNAを作るために重要な元素であり、生命誕生になくてはならない重要な元素です。
これが見つからなければ、生命の原料を彗星が運んだという仮説は完成されません。