未来型ワクチンは遺伝子を使う
ウイルスの体の一部や全体を使うのが従来型(20世紀)のワクチンである一方、現在開発されている未来型のワクチンは、ウイルスの遺伝子を使います。
ウイルスの遺伝子を体内に入れるのは危険ではないか? と考える人は多いですが、大丈夫。
人体に入るのはウイルスの遺伝子の全部でなくて、一部だけです。
人間に存在する46本の染色体のうち、1本だけ残されても絶対に「人間ができない」のと同じように、いくら変異能力が高いウイルスでも限界があります。
もっとも、大半の遺伝情報が取り除かれた状態ではそもそもウイルスはまともな体が作れないため、ワクチンの基本である「一度感染したこと」にして免疫を訓練することはできませんでした。
しかし遺伝工学の進歩は、不可能を可能にしたのです。
この新しい方法はまず、上の図のように新型コロナウイルスから遺伝子を取り出し、目的となるスパイクの遺伝子のみを集めることからはじめます。
そして次に、図のように集めたスパイクの遺伝子を人間の細胞に輸送する「乗り物」に組み込みます。
この乗り物にはいくつか種類があり、遺伝子の状態によって最適な乗り物が選ばれます。
そして乗り物に乗って体内に入ったウイルスの遺伝子は、人間の細胞にウイルスの体の一部(スパイク)を作らせることで、免疫に感染が起きたと錯覚させ、ウイルスの情報を記憶させます。
この手法をとるワクチンとして知られるのが、オックスフォード大学・モデルナ・ファイザー・アストラゼネカが開発中のワクチンです。
未来型ワクチンは既存の方法よりも製造に高度な技術を要しますが、ウイルスの情報を免疫により効率的に記憶させることが可能です。