凍った車のフロントガラスを夏の熱で溶かす
太陽エネルギーを今回のような光スイッチを利用して保存するというコンセプトの研究は、以前にも存在していました。
しかしこれまでの例では、光スイッチは液体中でなければ利用できないものだったのです。
ですが今回の材料はMOF複合材料を利用することで、液体ではなく固体として化学的に安定した状態を保つことができます。
さらにこの材料は可動部や電子部品も必要としない分子機械であり、その充電方式は太陽光だけなのでエネルギー利用時のロスもほとんどありません。
そのため例えば、車のフロントガラスのコーティングとして採用することで、夏の強い太陽光線からエネルギーを溜め込み、冬になるとガラスの凍結を溶かす熱源として利用することも考えられます。
これはまだ途上の技術のため、エネルギー密度は控えめで実用化させるにはさらなる研究を必要としますが、新しいエネルギー貯蔵庫として大きな可能性を秘めています。
また、光スイッチ分子は、他にもさまざまな用途が考えられます。
これは原理的には正確な光源があれば、分子1つずつを切り替えることもできるため、CDやDVDのような記憶媒体として使うこともできます。
また、MOF材料の中に薬物を閉じ込め、光や熱をトリガーにして体内の特定の箇所で必要量を放出されるということも可能にします。
こうした可動部も電子部品も必要としない、分子機械の材料が、これからの新たな未来を切り開いていくかもしれません。