太陽光のエネルギーを数ヶ月蓄える新材料
ランカスター大学の研究チームが発表した新しい結晶性材料は、太陽のエネルギーを取り込んで室温で数カ月間も貯蔵でき、必要に応じて熱の形で放出されることができると言います。
これが実現すれば、ライフラインからは独立したオフグリッドシステムとして利用することができ、遠隔地の暖房や、非常時の補助暖房として活躍できるかもしれません。
また環境にも非常に優しい価値あるエネルギー源としても期待できます。
では研究はどうやってそれを実現させたのでしょう?
これにはMOF(金属有機構造体)と呼ばれる特殊な材料が利用されています。
MOFは金属イオンのネットワークで構成された多孔質な材料のことです。
MOFの重要さは、構造内の小さな穴に他の小さな分子を入れることで、簡単にさまざまな複合材料を形成できる点にあります。
今回の研究で、そのMOFの穴に入れられたのは、アゾベンゼンの分子。アゾベンゼンは光応答性材料とも言われるもので、光や熱などの外部刺激を受けると形状を変化させる性質があります。
アゾベンゼンは機械のような動きができる「分子機械」の一種で、光スイッチとして機能します。
このアゾベンゼン分子がUV光(紫外線)を浴びてMOFの中で歪んだ形に変化すると、紫外線の持つエネルギーは位置エネルギーとして保存されることになります。
そして外部からの熱の変化をトリガーにして、その位置エネルギーを熱の形で非常に迅速に放出することができるのです。
光応答性材料はこの面白い性質により、これまでもいろいろと研究が行われていましたが、そのエネルギーの保存期間はたいてい数時間から、数日しか保ちませんでした。
しかし、この材料は実験の結果、少なくとも4カ月間もエネルギーを蓄え続けることができると分かったのです。
これは季節を超えて光のエネルギーを保存できる可能性を示しています。