クラゲの効率的な泳ぎの秘密が判明
クラゲの効率的な泳ぎの秘密が判明 / Credit: University of South Florida
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クラゲはヘリコプターと同じ「地面効果」を使って効率よく泳いでいた! 胴体の下に2つの渦のリングを作成

2021.01.11 Monday

クラゲは一切の泡を立てず静かに遊泳できる「世界一効率の良いスイマー」として知られます。

そのおかげで節約されたエネルギーは、自らの成長や子孫繁栄に回すことが可能です。

専門家たちは「この効率の良さを潜水艇や探査機に活かせないか」とクラゲの研究を続けています。

そして今回、サウスフロリダ大学により、クラゲの遊泳法の秘密が明らかにされました。

クラゲは、胴体の下に2つの渦のリングを作ることで、揚力を高める「地面効果」を発生させていたようです。

研究は、1月6日付けで『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されました。

>参照元はこちら(英文)

phys https://phys.org/news/2021-01-reveals-jellyfish-virtual-wall.html

水中界初!クラゲは「地面効果」を作り出していた

発見された2つの渦の輪っかは「ボルテックス・リング」と呼ばれ、実物の器官ではなく、半透明のボディの下でドーナツ型に回転する流体を指します。

ボルテックス・リングはそれぞれが逆方向に回転することで、まるで海底から押し上げられるような揚力を生み出していました。

研究主任のブラッド・ゲンメル氏いわく、「これは航空機に見られる地面効果(ground effect)と同じ原理」とのことです。

地面効果は、航空機が地面近くを飛ぶときに発生します。

航空機の翼は、風の流れを受けることで下面が高圧、上面が低圧の状態になります。

空気は高圧から低圧に移動するため、翼の上面へ向かって揚力(浮く力)が発生します。

翼のイメージ
翼のイメージ / Credit: 東北大学

また、風の流れと同方向への抗力(飛ぶのをジャマする力)も生まれるので、その分、上空で落ちないよう推進力が必要です。

ところが、翼のすぐ下に地面がある場合、それが壁となって空気の流れが集まり、上空にいるときよりも圧力がはるかに高くなります。

さらに、翼の端の悪影響も少なくなって抗力が減るため、上向きの揚力が格段にアップします。

これが地面効果です。

抗力(赤矢印)
抗力(赤矢印) / Credit: 東北大学
ヘリコプターの地面効果(上)
ヘリコプターの地面効果(上) / Credit: ja.wikipedia

自然界で地面効果を体得しているものは、海鳥やトビウオなどです。

彼らは水面スレスレを翼の羽ばたきなしで滑空しますが、これは地面効果(この場合は「水面効果」ともいう)を利用することで可能になります。

水面近くを滑空するハクチョウ
水面近くを滑空するハクチョウ / Credit: ja.wikipedia

そして今回の実験により、クラゲが2つのボルテックス・リングを地面代わりにして「仮想壁(virtual wall)」を作ることで、同様の効果を発生させていることが示されました。

具体的な固体の世界から離れ、水中で地面効果を使う生物はクラゲが初めてです。

8匹のクラゲを毎秒1,000フレームの高速デジタルカメラで観察したところ、静止状態からスタートした個体と比べ、動いている個体は最大遊泳速度が41%も増加していました。

クラゲの遊泳プロセス
クラゲの遊泳プロセス / Credit: royalsocietypublishing

ゲンメル氏は「今回判明したクラゲの遊泳法をモデルにして、エネルギー効率の良い水中探査機などが開発できるかもしれない」と話しています。

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