過酸化水素の濃度をチェックする包帯
研究中のウェアラブルデバイスを研究者たちは「スマート包帯(Smart Bandage)」と呼んでいます。
感染症を監視するというスマート包帯が行っているのは、単相カーボンナノチューブを使った傷の過酸化水素濃度のチェックです。
傷口に病原菌が存在するとき、マクロファージなどの白血球は細菌と戦うために活性酸素を放出します。
過酸化水素は活性酸素の一種で、この濃度を見ることで傷に感染症の危険がないかを確認しているのです。
カーボンナノチューブをカプセル化されて、包帯の繊維の内部に配置すされていて漏出することはありません。
カーボンナノチューブは過酸化水素の濃度によって蛍光による信号を出し、この信号をデバイスがワイヤレス(光学的)に検出します。
次にデバイスは情報をスマートフォンなどへ送信し、患者の状態について必要に応じて警告するのです。
繊維内部にナノセンサーを正確に配置するために、研究チームは最先端の顕微鏡を利用して包帯の材料構造を研究し、さらに専用の近赤外線分光計を自作したといいます。
カーボンナノチューブに基づいてウェアラブルデバイスを設計するというアイデアは、非常に有望だと研究者は語っています。
この技術によって、違和感なく使用できる包帯で機能するデバイスが実現できたのです。
現在、研究はこのデバイスを埋め込んだ包帯の小さなサンプルを使い、培養細胞を含んだペトリ皿で適切に機能するかの実験中だといいます。
実用段階には、まだ遠く、この培養細胞での実験がうまく行けば、次はマウスを使ったテストに映るそうです。
このデバイスは、診断目的でのみ使用されるもので、具体的に何か治療を施すようなものではありませんが、感染症の早期発見に役立ちます。
これは怪我の際に、抗生物質の使用量を減らしたり、手足の切断が必要となるような危険な状態を予防することが期待されています。
具体的には、慢性創傷の管理が日常的に必要となるような、糖尿病患者で特に役立つと考えられます。
包帯さえも診断デバイスの1つとなる日も、近いのかもしれません。